導入前に知っておきたい研修と労働時間の考え方

1.研修と労働時間の考え方

e-learningを含む研修制度の設計の際、”動画の視聴時間を労働時間に含むべきか、否か”を考える必要があります。そもそも労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」を指します(過去判例より)。そのため、会社の一般的な研修は全て労働時間とみなす必要があります。

それでは、e-learningツールの視聴は労働時間に含まれるのでしょうか?これは、導入方法によっても異なります。

まず、受講者を指名し研修の一環で、e-learningの所定動画を視聴する場合は上記に倣い労働時間とする必要があります。一方、広く受講希望者を募る公募制度の場合、受講者の自律的な学習の姿勢に任せるという方針で、e-learningの視聴時間は労働時間外とすることもあります。

以下、労働時間外とするのか、内とするのかの過去判例も参考にしましょう。

 

参考判例

▽労働時間と判断される場合

・参加が義務付けられている(強制されている)
・表面上は強制ではないが、欠席すると罰則が課せられたり、
昇給や賞与の査定に影響する等の不利益が発生する(事実上の強制)
・表面上は強制ではないが、出席しなければ業務に最低限必要な知識やスキルが習得できない(事実上の強制)

▽労働時間と判断されない場合

・参加が強制されていない
強制的な命令や指示の有無のほか、実質的に出席の強制があるかどうかで判断されることが多い。
参加がまったく自主的なもので本人に委ねられていて、業務とも関連性が薄く、
参加しなくとも業務に支障がない場合には労働時間には当たらないとされる。

 

2.自己啓発施策の場合、学習時間を労働時間に含むべきか?

自己啓発施策の一環で公募導入をする場合を考えてみます。

自己啓発施策という”受講者の自由意志に基づき受講者を募る”場合、会社は関与せず受講者に活用を委ねるケースが多く、e-learningの視聴時間を”労働時間外”としてみなすことが多いです。

しかし注意すべきは、表面上はe-learningの受講は受講者個人の自由となっていても、上記のように事実上の強制と取られる可能性がある場合です。

・公募ではあるが組織制度上、実質受講が義務付けられている場合
・e-learningの学習の有無が昇格や賞与に反映される場合
・e-learningを受講しなければ業務に必要な最低限のスキルが習得できない場合

これらの場合では、仮に自己啓発の公募施策であっても事実上の強制に近いため、視聴時間は労働時間であると判断されます。尚、一般教養に近い内容を学んだり、より高いスキルを磨く内容をe-learningで学ぶ場合は業務時間外としてみなすことはできます。

 

このように、e-learningの視聴時間を労働時間とするか否かに関しては慎重な判断が必要になります。制度を設計する際、受講者にアナウンスをする際には、上記の論点を参考にし、受講後に誤解や混乱を生まないよう注意していきましょう。

 

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