・専門分野には強いが「一般ビジネスの共通言語」が不足している
・「2040年ビジョン」の実現に向けて、先行投資や事業運営、変革を促す突破力のある人財の育成が急務
・コンテンツが体系化されていて、用語や定義がきちんと統一されているため、ビジネスの共通言語獲得という目的に合致していた
・課題起点でソリューションを提案してくれる「ラーニングパス」の機能があり、従業員自らが課題に合った学びを見つけ学ぶための機能が圧倒的に優れていた
・日揮ホールディングス(株)・日揮グローバル(株)・日揮(株)の全従業員3200人に対してメールで希望者を募り、初年度は全体の2割に近い580人が応募
・推奨コンテンツをまとめて特集を組み、イントラネットで紹介
・従業員に直接学びを届けることができ、各々がメリットを感じている
・締切後に「今から間に合わないか」といった問い合わせもあるなど、学びたい人はまだまだ多くいることがわかった
・次回以降の開講状況に関する問い合わせが複数。継続的な学びに繋がっており、ニーズは依然高い
・認識・意識レベルが異なる社員の間に共通言語を持たせる研修はどうしても効率が悪くなる中、社員の認識を揃え、共通言語を獲得する点で有益と感じる
まずは「2040年ビジョン」よりもさらに上位に位置するパーパスから説明します。パーパスは会社の存在意義を示すもので、日揮グループではこれを「Enhancing planetary health」としています。
直訳すると「地球の健康を強める」。人の暮らしのことだけを考えれば、経済活動を活発化させ、便利なものやおいしいものをどんどん作ればいいかもしれません。しかし、地球全体を考えると、工場をたくさん立てて経済発展することが良いことばかりとは限りません。
人にとって良いことと地球にとって良いことには相反する部分があります。とても難しい問題ですが、その答えのいちばん近いところにいるのが、当社のようなエンジニアリング企業だと考えています。これからは「人を含めた地球の健康」を考えることが大事な時代であり、その先頭に立ちたいという思いがパーパスには込められているのです。
2040年ビジョンはこのパーパスに続くもので、これから我々が向かうべき方向を示したものです。具体的には「エネルギートランジション」「ヘルスケア・ライフサイエンス」「高機能材」「資源循環」「産業・都市インフラ」の五つの領域を通じて、「Planetary healthの向上に貢献する企業グループ」への変革を目指すことを宣言しています。
ビジョンには営業利益などの数値目標も含まれていますが、日揮グループが目指すのはあくまでも「Enhancing planetary health」。人事のミッションは、全従業員に自分事として受け止めてもらい、自ら変化を起こし挑戦を続けられる組織へと変えていくことです。
パーパス、ビジョンの実現に必要な人財も明確です。2軸4象限の図で説明するとわかりやすいと思います。横軸は左が管理技術、右が固有技術。縦軸は上が未来創造、下が着実運用です。
現在、日揮グループのほとんどの人財は左下の「プロジェクト遂行」の象限にいます。大規模で複雑なプロジェクトマネジメントを着実に進めていける人財です。しかし、2040年ビジョンに向けてはそれ以外の人財の重要性も増してきます。
たとえば「エキスパート」。当社の技術力は高いといわれていますが、それは商社などと比較しての話。技術の専門企業と比べると、絶対的に強いとはいえず、例えば、土木の業界で「日揮のあの人はすごい」とすぐに名前があがるような圧倒的なエンジニアはまだ足りないと認識しています。
「マネジメント」「イノベーション」も同様です。M&Aなども含めた先行投資や事業運営の判断ができる人財、メンバーをモチベートしていけるリーダー、新規事業で会社を変革できる突破力のあるタレントなどをこれからしっかりと育成していく必要があります。
日揮コーポレートソリューションズ株式会社 人財部 人財・組織開発チーム 池内 達宣さん
現在の日揮グループの年間採用数は、新卒120人、中途80人ほどです。新卒については、これまで「一人前になるまでに10年」といった時間軸で育成してきましたが、今の時代には長すぎます。
また、現場で経験を積ませようと現業部門に配属すると、プロジェクト遂行の世界にどっぷりとつかってしまって、さきほどのエキスパート、マネジメント、イノベーションなどのキャリアに移行するために必要なクロスボーダーの経験がなかなか得られないという課題もありました。これでは、プロジェクト遂行以外の領域を強化したくてもなかなか進みません。
そこで2021年にスタートしたのが「Baysix制度」です。本社所在地が横浜なのでBAY(湾)とかけていますが、「6年でベーシック(基礎)を身につけてほしい」という意味です。
入社直後から、6年間でどんな経験をしてもらうかを最初から提示します。新規事業向けに採用した人財なら、「はじめの3年は現業部門で、4年目からは新規事業をやってもらいます」と人事が伝え続けるのです。自分がイノベーション人財として期待されている自覚があれば、現業部門にいても経済ニュースなどを注意して見るようになるでしょう。自分のキャリアを中長期で考えて自律的に自己投資するように促すのが狙いです。
採用時です。採用選考が配属面談を兼ねていて、本人の志向や適性、各部門の特性やニーズなどを基にマッチングしていきます。着実に進めることで、プロジェクト遂行に偏っていた人財分布を、理想形に近づけていきたいと考えています。
質的な面でいえば、グループ全体で圧倒的に足りないのが「一般ビジネスの共通言語」です。ビジネスに欠かせない一般教養と言い換えてもいいでしょう。
これまで当社の共通言語は、プロジェクト遂行の世界の言葉に大きく偏ってきました。たとえば日揮の中のオイル&ガスのプロジェクトで「FWBS2000番」といえば、どの従業員もコンクリート基礎のこととわかりますが、一般の方はまず知らないでしょう。全従業員がこれを理解しているのは本当にすごいことではあるのですが、逆に財務諸表に関することなど、一般的なビジネスでは常識とされる用語が社内で通じないことも多々あります。
私自身もエンジニア時代には知らなかったですし、興味もありませんでした。技術者は専門分野に強ければ、ビジネスの知識は特段持っていなくてもいいと考えていたのです。このように考えている従業員が多くいるのが課題であることにエンジニアを離れて気づきました。
これからはエンジニアも取引先の財務状況を見て、取引が妥当かどうかを判断する機会が増えてくるはずです。マネジメント、イノベーション、あるいはエキスパートとなる人財を育てるにしても、まずビジネスの共通言語を獲得することが欠かせないと考えています。
一番の目的は、当社に不足している「ビジネスの共通言語」を獲得することです。海外駐在員を多く抱える日揮グループにおいて自律的に一般教養を身につけてもらうには、動画で学べるeラーニングが最適だと考え、いろいろなサービスを比較して導入を決めました。
「GLOBIS 学び放題」を選んだポイントは大きくわけて二つあります。第一にはコンテンツが体系化されていて、用語や定義がきちんと統一されていること。一般教養を学べるコンテンツは多数ありますが、動画によって用語や定義はさまざまです。共通言語を獲得することが目的なので、統一、体系化されたサービスであることは大前提でした。
第二は課題起点でソリューションを提案してくれる、いわゆる「ラーニングパス」の機能があったことです。知識が少ない状態では、自分が抱えている課題の解決に役立つ知識や理論を探すことが難しいものです。たとえば上司とうまくコミュニケーションがとれないとき、いきなりクリティカル・シンキングを学んでみようという発想にはなりません。クリティカル・シンキングがどんな知識で、何に役立つかを理解していないからです。
ラーニングパスは課題とソリューションを的確にひもづけてくれています。提案される動画を見れば、高確率で「求めていたもの」が得られます。これは人事部にとってもありがたい機能です。従業員規模が大きいと、人事が従業員一人ひとりの課題を把握して学習のアドバイスをするのは不可能に近いでしょう。そうなるとプラットフォームの機能に頼るしかありません。「GLOBIS 学び放題」は従業員自らが課題に合った学びを見つけ、身に付けるための機能が圧倒的に優れていました。
これまでの実績を踏まえ、グループの全従業員3200人に対して、初年度は600人の希望者を募りました。トライアル的な部分もあり、募集告知のメールはあえて1回しか送っていません。その中でも580人から応募があり、希望者全員にIDを発行してスタートしました。予算は半年のコースで一人1万円。投資額600万円で従業員に直接学びを届けることができ、各々がメリットを感じているという結果は非常に良かったと思っています。
締切後に「今から間に合わないか」といった問い合わせもあるなど、学びたい人はまだまだいます。将来的には全従業員の半数の1600人程度まで利用を広げたいと思っています。組織の共通言語を獲得する目的からも、半数の従業員が学んでいれば、ミーティングなどで数人集まった時、最低でもそのうち一人は「学び放題」を利用している状態になります。クチコミでさらに広がることも期待でき、強制的にやらせるのではなく、横のつながりでアメーバ的に学ぶ風土が浸透していくのが理想だと考えています。
データを取ってみましたが、想定より属性や職種に偏りはありませんでした。新入社員から定年間際の人まで利用しています。あえていえば、海外部門の反応は他より良かったと思います。
海外のプロジェクトは、世界を相手に競争力を維持していくために極めてシステマティックに進められます。エンジニアとしての専門性を鍛えられる現場であると同時に、他分野と連携する機会を持ちにくい職場でもあるのです。もともと当社は「学び」に積極的な人が多いのですが、特に海外部門は、2040年ビジョンに向けて、新たな共通言語を獲得すべきだと感じていたのかもしれません。
「リーダーシップ」「キャリア・志」「思考・コミュニケーション」などがよく受講されています。実は「GLOBIS 学び放題」導入のサブテーマに、「職場での上司と部下のコミュニケーション促進」がありました。コミュニケーションが不十分だと、心理的安全性を担保した建設的な議論ができないからです。特に昨今はオンラインのコミュニケーションが多くなり、関係性が築けていない状態で議論すると、誤解やトラブルを招くという問題も出てきていました。
そこでグロービスさんに協力いただき、推奨コンテンツを10本ほどまとめた特集を組みました。それもコミュニケーション関連の受講が増えた要因の一つかもしれません。
社内のイントラネットで「見られているコンテンツTOP10」のランキングや受講者のポジティブなコメントなどを紹介しています。他の人が役に立っていると感じるコンテンツなら自分も見てみようという心理を狙いました。
細かいことですが手軽に使える環境を整えることで、利用率も徐々に上がっていきました。例えば、ログインを面倒に感じる人もいるので、広報の際は動画のURLを貼って、ワンクリックで見られるように工夫しています。
今は2030年に向け、人的資本経営の一環となるロードマップの策定に取り組んでいます。これは、従業員に対して「こういう人財になりましょう」と呼びかけるものではありません。2040年ビジョンを実現するため、その10年前までに多様な人財を保有してしっかりした布陣をつくろうとする戦略です。
人事の施策は往々にして、各施策の連関が設計されず、短期・単発で終わってしまう傾向にあります。これでは目的が不明確になり、戦略的に文化を醸成することは難しい。「GLOBIS 学び放題」でいえば、上司と部下のコミュニケーションを円滑にするという目的だけでなく、その先にあるエンゲージメントの向上や自律的な学びの定着といった本来の目的を意識して受講をするべきです。
今回のロードマップはまずそこを第一に捉え、自ら変化を起こし続けられる組織になるにはどうしたらいいかが常に施策の起点となるように考えています。
ロードマップで注力しているポイントとして、従業員の「内発的な学び」の促進があります。私はよく、のどが渇いていないのに水を与えても仕方がないと表現しています。つまり、研修を受ける前に学びの「必要性を感じる」ことが重要です。この考え方にそって、新入社員研修なども期間や内容を見直す必要があるかもしれません。
内発的な学びは、まずは自分を「知る」、どこに向かいたいのかを「描く」、そのうえで「学ぶ」、仕事に「活かす」というステップで進みます。実務で活かしていくとさらに自分のことがわかってくるというように、循環させることが大切です。この循環のなかで、「学ぶ」の段階は、まさに「GLOBIS 学び放題」が欠かせない部分です。
その他の領域でも、社員の認識を揃え、共通言語を獲得する際に非常に役立つと感じています。例えば、「ダイバーシティ&インクルージョン」についての認識レベルはさまざまで、そもそも多様性の概念から学ぶ人もいれば、意味はわかるが必要性を感じない人もいます。
認識・意識レベルが異なる社員の間に共通言語を持たせる研修は、どうしても効率が悪くなります。しかし、今回のロードマップ策定を進める土台作りとして、避けては通れない過程です。とくに「ダイバーシティ&インクルージョン」「エンゲージメント」「ラーニング」で効率的に共通言語を得るためにも、「GLOBIS 学び放題」を活用していきたいですね。
より「グロービス学び放題」を検討されたい方向けに、
詳細資料(PDF)、無料トライアルをご用意しております。