笹野さん/2017年に発表した「2030年ビジョン」の中で、当社は大きく方向転換しました。それまでの既存事業である自動車、バイクの開発・製造、いわゆる「モノ作り」を強化するだけでなく、移動の喜びや暮らしが豊かになる喜びの提供、カーボンフリー社会や交通事故ゼロ社会の実現、つまり「コト作り」へと舵をきり、新たな価値を創出する会社へ変わりつつあります。
竹花さん/社会や市場が変わり、会社も変わっていこうとする中で、当社が従業員に求める人材像も変化しています。Hondaは元々従業員の自主性を重んじる会社で、従業員一人ひとりのやりたいこと、つまり個々の意欲によって成長を遂げてきました。創業者である本田宗一郎の時代から、従業員は「会社のためではなく、自分のために働け」と言われ、そこには「自分の目指すものや目的を明確に持ち、そこに向かって一生懸命努力することが大切であり、それが周りの人や会社にもプラスの影響を与える。会社はあくまでそれを実現する場所である。」という考えがあったようです。
しかし、時代が変わるに連れて従業員の意識も変化し、近年は「自分は何をしたいのか」が描けない従業員が増えてきています。変化の激しい時代においては、会社から言われたことをしているだけでは環境変化に取り残されてしまうため、従業員一人一人の意志をもとに自律的に学び、働くことがより一層重要になっています。そこで私たちは「自分のために働け」という言葉を再定義し、「会社と従業員の方向性が合致したときに大きな発展が生まれる」と捉え、Honda従業員のあるべき姿を示すキーワードとして掲げています。
人事部 人材開発課 課長 笹野 真紀さん
笹野さん/もう一点、従業員が自己研鑽にあまり前向きではない、という課題を感じています。モノ作りを通じて独自性を重んじてきた歴史から、「外を意識しない」社風でもありました。人材育成においても各部門がOJT中心の専門性を重視した研修を行ってきたため、ビジネス全般に関する知識や、それらに関連する研修がそれほど用意されていません。また、社内調査の結果から若手もベテラン層も、自己研鑽に関する数値が低下している傾向が見られます。専門性を高めることの重要性は変わりませんが、変化の大きい今の時代において、より広範なスキルを学ばずにキャッチアップしていけるのか、新しいことに挑戦する時に自分でアップデートしていけるのか、という懸念もあります。このような背景から、2021年10月より研修制度を一新し、これまでの階層別を中心とした研修体系から、自主的な学びを中心とする研修体系へと変え、併せて従業員が自分の望むキャリアを実現するためにどのようなスキルを身につければよいのかをまとめた『能力開発ガイド』を提供することになりました(※2021年6月取材)。
人事部 人材開発課 竹花 賢人さん
竹花さん/以前の研修体系は大きく分けて2種類の研修に分かれていて、人事部が提供する年代・階層別研修と、各事業所や部門が独自で行う専門性・ビジネススキルを高める研修となっていました。このように会社が画一的に提供する研修制度が従業員に受け身の姿勢を醸成し、結果として自己研鑽に対する意欲の低下を招いているのではないか、という問題意識から、今回の研修制度の改正で階層別の研修を廃止し、代わりに自己選択型の学習プログラムを提供することになったのです。
その一つに「グロービス学び放題」があり、4万人を超える国内の全正規従業員を対象に展開しますが、あくまで自己研鑽という位置付けで、会社が全員にアカウントを発行するのではなく、手を挙げた従業員に順次付与していきます。同時にLMSを導入し、「会社から与えられる階層別研修」から、「自ら必要な学びを選択する学習プログラム」へと転換するための環境を整えました。また併せて視聴データを活用し、一人ひとりがどれだけ学んでいるかを可視化できるような仕組みを構築中です。
プログラムの中身は、オンラインでのライブ型研修と、従業員が好きなタイミングに受講できるe-learningです。ライブ型研修では、先ほど笹野が申しあげた『能力開発ガイド』の中にある、Hondaの従業員に求める共通能力に結びつく研修が中心です。基本的な思考能力、例えばロジカル・シンキングやファシリテーションに関する研修を予定しています。e-learningは『グロービス学び放題』をベースに、当社独自のコンプライアンスやガバナンスに関するプログラムを加える予定です。これらはすべてLMSで管理・受講ができるので、ゆくゆくは専門性を高めるような研修プログラムも、ここで併せて運用できたらと考えています。
竹花さん/今回の研修制度の改正にあたり、社内の各部署で行っている研修をすべて調査しました。その結果から『グロービス学び放題』には、社内の研修ニーズに合致するコンテンツが数多く揃っているということが理由の一つです。二つ目は、マネジメント層の育成に役立つコンテンツが豊富なこと。マネジメントそのものはもちろん、経営などマネジメント層に求める知識をカバーできる点がメリットです。そして最後に、既に新入社員研修制度で導入し、大きな反響を得ていたこと。私自身もデモを利用したのですが、他の動画学習サービスやe-learningと比較して親しみやすいUIで、かつ分かりやすく、先進的なコンテンツが含まれていると感じました。
直井さん/私は2020年度入社で、実際に新入社員研修で『グロービス学び放題』と『グロービス学び放題フレッシャーズ』を利用しました。入社前、新入社員研修は「会社から与えられたプログラムに取り組むもの」と想像していたため「自分が興味を持ったテーマを学ぶことができる場」が用意されていることに驚きました。Hondaのマーケティングや広報に憧れて入社したので、クリエイティブディレクターである鹿毛さんの「マーケティングは愛」など自身の夢の実現に役立ちそうな動画を選び、積極的に視聴していました。新入社員研修で学んだ内容を活かし、将来はHondaのファンを増やせるような企画を自ら発案し、展開したいと思っています。
直井貴哉さん(2020年入社)
吉永さん/私も同様で、2020年度入社です。Hondaが好きで入社したため、会社に貢献するためにはどんなことを学べばよいのかと前向きに学べました。少し前までは学生でしたから、やはりビジネス志向が弱いと感じて「思考」のカテゴリーを重点的に視聴しました。当時は理解しきれなかった「実践知」などの動画の内容も、最近観直してみると本質をついた内容だなと改めて感心しました。動画とはいえ、ビジネスの現場で活躍されている方の経験を入社後早い段階で学べたのは、おおいに意味があったと思います。
吉永隆二さん(2020年入社)
笹野さん/最近配属された若手について各部署に問い合わせたところ、「自分の意思をしっかり伝えられる新入社員が多い」というフィードバックがありました。新入社員研修で主体的に学び、多くの情報をインプットし、それをワークショップなどでアウトプットする機会も用意したことがプラスに働いたのではないかと思います。また、例年よりも意欲的に業務に取り組む新入社員が多く、その意欲をしぼませないよう部門として何ができるだろうか、といった前向きな意見をたくさんもらいました。また、『グロービス学び放題』だけのおかげではないかもしれませんが、新入社員研修の中からビジネスに活かせそうな芽が生まれ、特許取得に至るといった具体的な成果も生まれています。
竹花さん/これまでの自主性を重んじる社風に加えて、今後は「自律的に学びを継続する」という姿勢が求められるわけですが、まだそこについては完全に浸透しているとは言えず、様々な角度から意識醸成を行っている最中です。自律的に学習して欲しいと願ってはいるものの、やはり会社側がきっかけをつくることも必要かと思っています。私たち人材開発課が社内に向けてPRするだけでなく、学習の手がかりとなる情報も提供していく予定です。具体的には先ほど笹野の話にもあった「能力開発ガイド」の共通能力と、『グロービス学び放題』のコンテンツを紐づけて、「Hondaがあなたに見つけて欲しい能力」と、「それを身につけるための手法・機会」を発信していきます。
また、2021年4月には、Hondaがこれからも勝ち残っていくために人事制度全体としてどのように変えていくべきか、というトップメッセージを全社に向けて発表しました。
竹花さん/2021年10月から3月までで5000名を目標としています。その後については様子を見ながら検討する段階ですが、自己啓発研修で手挙げ式とは言っても、できるだけ多くの従業員に受講して欲しいですね。
笹野さん/今回の導入は、これまでの階層別研修に代わって全従業員に共通する能力を開発する、いわばHonda従業員としての基礎を培う場の提供であり、その上に各部門の専門的な研修を積み上げていくイメージです。1度受講して終わりというのではなく、学び続けることを期待しているので、そのような会社の意図を折りに触れて伝えたり、キャリアの節目ごとにふさわしいコンテンツを推奨したりといった施策も検討しています。
実務との連携させる施策も企画していく予定です。先ほど新入社員研修について「インプットしたことをアウトプットする場を設けたことがよかったのでは」といった話をしましたが、ただ学ぶだけでなく、それを発揮する場があるからこそ、「これからも学んでいこう」と思えるのではないでしょうか。「自己研鑽」と、「会社からの仕掛け」や「業務での実践」を上手く掛け合わせるような仕組みを作っていくのが、私たち人事部門の役割だと考えています。
より「グロービス学び放題」を検討されたい方向けに、
詳細資料(PDF)、無料トライアルをご用意しております。