フレアスが力を入れているのは、ITによる働き方の改善だ。スタッフ全員にiPadを配布し、施術の記録やスタッフ同士の連絡ができるようにしている。この施策の背景には、どのような課題があったのだろうか。
管理本部 人事部 部長 近藤 理比古さん
近藤さん/「施術後にはスタッフにサービスの報告書を書いてもらっているのですが、事業所に戻ってから入力したり、就業時間前に報告書を入力したりしていたため大きな負担となっていました。残業も増えてしまっていましたね。当社の場合、時短で働いている主婦のスタッフもいますし、採用時にも残業を気にする候補者が多かったので、なんとか解消していきたいという思いがありました」
近藤さん/「また、連絡手段も課題でした。訪問マッサージのため、スタッフみんながバラバラに動いていることもあり、会議で一同に集まることが難しかったのです。iPadで報告することで、そうしたコミュニケーションも増やすことができるのではないかと考えました」
iPadの導入によって、移動時間等の隙間時間に報告書を書くことができるようになり、残業時間の削減につながったという。有給休暇の取得率も上がり、今では80%〜90%の取得率になった。
当初はiPadを使ったことがないスタッフの間にとまどいもあったそうだが、地道な研修により、定着も進んでいる。今では「iPadがなかったら困る」という声も出てきているそうだ。
働く環境の整備と同様に、フレアスが力を入れているのが教育だ。新人はもちろん、2年目以降のスタッフにも、OJTと集合研修を実施。研修に掛ける費用は、一人当たり約100万円だという。「見て覚える」文化の強いマッサージ業界の中で、ここまで研修に力を入れているのは珍しい。
こうした手厚いスタッフ教育もあり、サービスのクオリティー・コントロールを得意とするフレアス。だが、「マネジメント」という部分で課題があった。
マッサージ師としてキャリアを積んできた人材も、上の立場になればマネジメント能力が求められる。そんな中で、「どのように部下の指導・管理をしたらよいのか分からない」という声が現場から多く出てきたという。
代表取締役社長 澤登 拓さん
澤登さん/「ここ数年の一番の課題は『マネジメント能力をどう上げていくか』でした。マッサージ師はマネージャーではありません。マッサージの技術を持つ人間が、マネジメントも得意だとは限らない。むしろ、得意ではない人が多いのです。チームをまとめるのに苦労しているところです」
近藤さん/「北海道から沖縄まで事業所が散らばっているため、一同に集めて研修するのにもかなりのコストが掛かります。マネジメント層でも、現場で訪問マッサージに従事している者が多いため、3日間研修に来てもらうと、売上に響いてきてしまうのです」
そこで、フレアスが導入したのがビジネススキルの動画学習サービス「グロービス学び放題」だ。マネジメントやクリティカル・シンキングなどのビジネススキルを、動画で学べるサービスである。タブレットやスマートフォンを活用して、いつでもどこでも学習を進めることができる。
スマートフォンやタブレットのアプリで、ビジネススキルを学ぶことができる「グロービス学び放題」
澤登さん/「インターネットを通じて、どこにいても同じ環境で学べるということで活用させていただきました。北海道から沖縄まで全国一律で、全員に同じ教育を受けさせられるというのはよいですね」
近藤さん/「1つの動画が数十秒から数分とコンパクトでありながら、濃い内容であった点が決め手で、社員研修に採用させていただきました」
特にフレアス社員に人気なのは、メンバーの力を引き出し、リーダーとして組織で成果を出すための知識を学ぶ「リーダーシップ」の講座だという。
「『リーダーシップ』といっても言葉しか知らない」というフレアス社員が大半だった中、動画で学ぶことによって、実際の考え方ややり方を学ぶことができるようになったそうだ。
近藤さん/「『今まではなんとなくマネジメントしてきたけれども、自分の組織の課題や現状を踏まえて、適切なマネジメントの重要性を学ぶことができた』という声が多かったですね。動画によって現場の課題や部下について知ることの重要性を学び、メンバーに声を掛ける回数が増えたという感想もありました」
グロービス学び放題は、実際のビジネスシーンを想定した会話の事例も多い。そうした例が豊富な点も分かりやすく、好評だそうだ。
近藤さん/「ビジネスに関する知識や経験を持たない現場スタッフにとっても、理解しやすかったという声が多数あがっています」
実際のビジネスシーンを想定した会話の事例も豊富だ
フレアスの場合、「グロービス学び放題」の活用の仕方も特長的だ。
現場所長など全管理職に動画を閲覧させるとともに、月に1つテーマを決めてレポートを提出させているという。そのレポートの中から、「自社に引き寄せ何らかの示唆を出しているかどうか」などを評価し、人事評価の参考にしているというのだ。
近藤さん/「純粋に学ぶ姿勢というのは文章に出てくるものです。曖昧な言い方や感想だけを提出するメンバーと、組織全体を見渡して具体的に業務に落とし込んで考えられるメンバーでは、学ぶ姿勢が全く異なります。こうしたレポートの評価を、昇進の人事考課の材料にしました。人事の立場としても、非常に参考になりましたね」
実務とマネジメントの両面で、充実した社員教育を実施しているフレアス。「手厚い教育を受けて成長したい」と入社を希望する人も出てきているという。
最後に、お二人に今後どのように人事制度を固めていきたいか伺った。
澤登さん/「働く環境の整備と人材育成は、つながっているものだと思います。教育をすればするほど生産性は向上するのではないでしょうか。そのためにも、ITはどんどん活用していきたい。実際、iPadの導入によって、残業は減るのに生産性はあがっています。こうした相乗効果をどんどん作っていきたいです」
近藤さん/「『組織マネジメントやリーダーシップに興味関心が出てきて、もっと学びたいと思うようになった』という声も社内で挙がってきています。そのようなことを体系的に学べるような研修の構築をしていきたいと考えています。現場で役立つ技術と、マネジメントスキルなどのビジネススキルの二本柱を大切にして、教育カリキュラムを作っていきたいですね」
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