・若手社員の成長欲求に応えるために、学習機会の創出と、スピーディーにプロとして認められる人事制度の導入が必要だった
・目の前の業務に多大なリソースを割いている社員の学びの時間が短く、結果的に業務時間も長くなる悪循環が生まれていた
・「電通ビジネスコアスキル」の学びを提供するのに、内部リソースだけで対応するには限界があった
・世の中一般の知見や智も取り入れ、電通独自に偏りすぎない配慮も必要だった
・外部の信頼できるコンテンツ提供事業者に頼る際に、「GLOBIS 学び放題」が一番手の候補に挙がった
・グロービス経営大学院(ビジネススクール)の先生や有識者が監修する、質の高いコンテンツが豊富にあり、短時間で効率よく学べること
・入社1年目から5年目までの若手社員の全員が「GLOBIS 学び放題」を使えるよう、社内に展開
・「指定ラーニングパス」機能を使って、電通ビジネスコアスキル強化につながる動画コンテンツを人事サイドからリコメンド
・独自のスキル分布シート、行動目標シートなどを活用。定期的にスキル習得の現状の振り返りも実施
まず、若手社員のキャリアスパンの意識が変わってきていることが挙げられます。今までは10年かけて成長し、プロとして認められていく流れでしたが、「それって遅くない?」「世の中的な流れからも半分にしませんか」といった課題意識からスタートしています。
そもそも成長欲求は誰にでもあって、「どんなに満たしても満ち足りることはない内側から溢れ出る欲求」と言われています。その想いに応える環境をととのえることで若手社員の定着にも繋がっていくのではとも考えたのです。
また、今回の制度変更を行う前段として、「全社員」の成長施策を2019年から3年間実施したことで、学ぶことや成長していくことの重要性が組織内に浸透したタイミングでもありました。
株式会社電通コーポレートワン 人事オフィス HRマネジメント室 育成部/ディレクター 半田 友子さん
最初に手をつけたのは、今までどんな仕事をしてきたのか、その内容と時間の棚卸しです。結果、目の前の仕事で忙しい電通社員は、月に1時間程度しか学んでいなかったという調査データが出てきたのです。
学びの時間が短いということは、例えば空っぽの引き出しをひっくり返して企画を作るようなもの。この状態だとアイデアが煮詰まり会議も長くなるなど悪循環に陥ったり、何より世の中が急激に変化していく中でクライアントに価値ある提案をすることができません。「変革を牽引する人財になるには、自分をアップデートしていかなきゃ無理だよね」というようなメッセージを社内に出していきました。それとともに、様々な外部有識者の力も借りてオリジナルの施策を定期的に複数回実施したことで、3年の間に学びの時間が月14時間ぐらいまで上がったのです。
何のために学ぶのか、その目的が重要だと私たちは考えています。仕事というのは人生の一部なので、そのハンドルを握るのは会社ではなく社員一人ひとり。そこをブラさずに、社員の「自律・自走」を信じることを常に意識しています。
特に電通は、社員の「成長欲求」を大事にしたいという思想があり、人事は社員を育成するという立場ではなく、あくまで一人ひとりの自律的な成長を「支援する」という立場を意識しています。その前提において、自分の振り返りをして、現状に対する気づきを得て行動につなげてもらいたいという想いで人事制度を設計しました。
そのため、私達がやっていることは、例えば穴に落ちている人がいたら、そこから救い上げることではなく、「そこに“はしご”がある」と教えてあげることに近いと思っています。また、すでに自分自身をアップデートしている人には、事業を牽引するリーダーとして期待し、指名型でリーダープールを作るなどの工夫を並行して行っています。
もともと電通では、多様な仕事に対応できるジェネラリストを作っていくという人財戦略を持っています。ビジネスの基礎スキルは「OS」、専門スキルは「アプリ」だと考えると、OSが古いとアプリが入らないのと同様、ジェネラリストにもやはり土台が重要と考えております。
そして、その土台に当たるのが「電通ビジネスコアスキル」と名付けた、13のポータブルスキルです。
思考力やコミュニケーション力等、電通でどんなビジネスをおこなううえでも必ず必要になる必須スキルを定義したものです。
これらのコアスキルは、OJTで培われるものだとは思う一方、人によって業務内容も異なり経験量も異なるため、同じレベル・速度で身に付いていかないのです。少なくとも全員このレベルまで、というのはある中で、そこをクリアしたいという前提がありました。
また、電通には社員が5,000人以上おりますので多くのコンテンツを持っているのですが、社内にある教育素材を改めて整理してみると、動画になっていなかったり、組織で閉じられていたり……整理するのに相当な工数がかかってしまうと感じたのです。また、世の中一般にあるセオリーやアカデミックな知見を知ることも大切です。そこで、信頼できる外部のコンテンツに頼ることも必要という結論に至りました。
電通ビジネスコアスキルを鍛えることを目的と考えたときに、一番先に思い出したのが「GLOBIS 学び放題」でした。2019年の成長支援施策スタートのタイミングから活用しており、ビジネスの基礎スキルにあたる内容が網羅的に学べることを知っていました。そして、電通ビジネスコアスキルはビジネスの基礎スキルと親和性がある内容ですので、GLOBIS学び放題が合うだろうと思いました。
あとは、グロービス経営大学院の先生方や有識者の方々がコンテンツを監修して作っているところに信頼感があった点や、ビジネス書に書いてある内容が30分にまとまっていて、効率性の意味でも有用だと思ったことが導入の決め手です。
ビジネス書だと読み終わりに数日かかる内容が数分~1時間程度でまとまっていて、倍速視聴やスマホ視聴で移動時間や隙間時間にサクッと見れるのは便利だという感想は多いです。他にも、自主的な学びに加えて、新入社員配属後の受入研修時に指定コンテンツの視聴を推奨し、現場業務にむけてスタートレベルを合わせるというような使い方もしております。
まずは冒頭に触れた、若手社員がプロフェッショナルとして認められるまでの期間を10年から5年に短縮したこと。同時に、プロとして認められるための「昇格」という節目を設けて成長のチェックができるようにしました。この目的は、変化が著しい時代に合わせた若手社員の活躍機会の提供と、頑張った分だけしっかりと対価を提供できるようにすることが一つ。もう一つは、短縮した期間の中で社員が自律的に成長加速していくための支援強化にあります。
はじめに、どんな仕事をする上でも必要になる「電通ビジネスコアスキル」を社内に公開しました。そして、実際にそのスキルを学ぶ手段として社内研修動画の他に、GLOBIS学び放題の「指定ラーニングパス機能」を活用しました。
ラーニングパスは、GLOBIS学び放題で提供されている動画コースの中から、目的や課題に合わせてコースを組み合わせられる機能です。そのため、電通ビジネスコアスキル強化につながる動画コンテンツの組み合わせを人事が選び、リコメンドしたのです。この工夫により、若手社員自身が何を学べば良いのか迷わないようになったと思います。
また、電通ビジネスコアスキルのレベルチェックを年2回実施。各年次で自分自身がどのレベルに該当するか確認できる「スキル分布シート」を作成し、そのシートをもとに上長と1on1を実施しています。今後のコアスキル習得のためには、成長加速ツール「行動目標シート」を使用し、コアスキル習得のため1〜2年目と3年目以降の、それぞれの年次ごとの行動目標を明記。日々の仕事における自身の行動指標としての活用を推奨しています。
5年次の社員を対象に実施したプログラムのアンケートでは「自分の現状を把握し、今後に目を向けることができた」と回答した人が85%、「今の強みを把握することができた」と回答した人は90%という結果が出ています。新しい制度の施策については開始してからまだ取り組み半ばであるため、数字はこれからさらに出てくると思います。
また、以前であればプロになるまで10年もかかるんだったら辞めちゃおうかなと思っていた社員がいたかもしれません。しかし、「5年間でプロになれて、さらに適正な報酬も与えられるなら、もう少し頑張ってみようかな」というような、心理的変容を若手社員と話していて感じられるのも、1つの大きな成果です。
「電通に入ったら、最高に成長できる」そういった評価がされるような会社になると素晴らしいと思っています。そのために今後も、社員の自律的な成長をどんどん促し、多様な強みで活躍できる電通を目指していきたいです。
※本記事は、『【HRサミット2023 ONLINE】若手社員の成長を加速する 電通流「自律型人財育成」の秘訣とは』で講演いただいた内容を元に、導入事例として執筆したものです。
【HRサミット2023 ONLINE】電通様の講演レポートはこちら
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