DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が叫ばれています。しかし「デジタルの何を学べばよいのか」「全社員がデジタル知識を持つ必要はあるのか」など、疑問も絶えない領域ではないでしょうか。
今回は、会社組織においてデジタル知識が実務上どのような効果をもたらすのか、またどのように学ぶと効果的かについてご紹介します。
データサイエンティストやエンジニア等の専門職種だけではなく、なぜビジネスパーソンにデジタルやITの知識が必要なのでしょうか。様々な背景がありますが、ビジネスと大きく関わる点として次の3点が挙げられます。
DXの構想を練り旗振り役になる人は、DX推進担当者など一部の人かもしれません。しかし、実際に施策を推進する際には全社員の理解と協力が必要です。全社員がデジタル・IT知識を有することで、経営層やDX推進部門の考えがその他社員にも鮮明に伝わります。
自社にDX推進人材がいても、他の社員のデジタル・ITの理解が足りていないと、双方の適切なコミュニケーションがとれなかったり、同じ目標に同じ熱量で向かえなかったりします。最悪の場合、お互いの仕事を双方が阻害するような対立構造になってしまうこともあり、社員の離職や、DX人材が持っている知識や技術を存分に発揮できない恐れもあります。
DXとは、ただ単に業務をデジタル化することではなく、デジタル・ITを活用してビジネスモデルを刷新し、新たな価値を創出することです。つまり、専門スキルを有した外部の人材を採用するだけでは不十分で、既存のサービスについて十分習熟した社員こそが中心となってDXを推進する必要があります。新たな価値提供ができれば顧客満足度の向上にもつながり、ゆくゆくは企業価値向上に繋がります。
それでは、DX推進・イノベーション加速のためにすべてのビジネスパーソンが最新のデジタル・IT知識を獲得することが理想でしょうか。これを実現するにはお金も時間もかかりますし、本業に関する知識を深める余力もなくなってしまいます。
育成人事・経営層目線では、効率的に全社員にデジタル・IT知識を獲得してもらうために、まず次の2つを押さえるとよいでしょう。
ITやAIの知識を持つ社員は、テクノロジーを用いて新しいアイデアを実現する能力が高まります。これにより、企業内でのイノベーションの種が増え、新製品や新サービスの開発が促進されます。さらに、データ分析やAIツールの基本的な理解がある社員はデータを用いた意思決定にも寄与するでしょう。DXやUX(ユーザーエクスペリエンス)改善にはデータの活用が不可欠です。
基礎的なITシステムの知識がある社員は、システム障害やデータ損失に対する予防策を理解し、実践することができます。これにより、ITインフラの安定性が向上し、サービスや業務の中断リスクが減少します。また、社員全体がセキュリティに関する基礎知識を持つことで、サイバー脅威への対策力が高まります。これにより、データ漏洩等のリスクが低減し、企業全体のセキュリティレベルが向上します。
なお、ビジネスパーソンに必要なデジタルの基礎知識は、経済産業省が「デジタルスキル標準」として定義しており、そちらを指針に知識拡充を図るのもよいでしょう。
デジタル・ITをビジネスパーソンが学ぶメリットが少しずつ見えてきた一方で、どんなに育成人事や経営層が「デジタル・ITに関して学んでほしい」と考え施策を打っても、社員自身が学ぶメリットを感じていないと、積極的に学習を進めてくれないのが現実です。
そこで育成人事や経営層は、社員にとっても次のような知識獲得のメリットがあることを訴求していく必要があります。
基礎的なITおよびAIの知識があることで、業務の自動化やデータ分析の基本的な理解が深まり、日常業務の効率化が期待できます。例えば、Excelのマクロや簡単なデータベース管理を理解することで、手作業によるデータ入力や分析作業が軽減されます。
ITシステムの基本的な理解があると、システム障害やデータ損失などの発生リスクを事前に把握・検討し、適切な対策を講じることができます。誰しも思わぬ損害は避けたいものですが、セキュリティ・リスク関連は「知っているか・知らないか」が大きな分かれ道となります。リスク管理能力が向上することで、業務の安定性が増します。
デジタル・ITの知識が身についたかどうか試せる資格もあり、人材育成や社員のモチベーションアップにも有効です。ここではビジネスパーソンにおすすめのデジタル・IT系資格を2つご紹介します。
ITに関する基礎的な知識保有を証明できる国家資格で、「パスポート」という名のとおりIT化が進んだ現代社会で社会人として必要な基礎的能力を有していることを国が証明する試験です。ストラテジ系(経営全般)、マネジメント系(IT管理)、テクノロジ系(IT技術)の3分野から出題され、ITの基礎知識のみならず、ビジネス・経営全般やIT管理・マネジメントについてもバランス良く学べる点で、すべての社会人に必須の資格です。
「ITの安全な利活用を推進する者」向けとされており、マネジメントに関わる方におすすめです。企業を情報セキュリティにまつわる脅威から守ったり、社内や顧客の機密情報を守りながらビジネスを推進するための基礎知識を習得できます。
最後に、ビジネスパーソンがデジタル・IT知識を身につけるためにおすすめのeラーニングサービスとして、「GLOBIS 学び放題」をご紹介します。
最新テクノロジーを学ぶことが、本当に初学者の学習に最適でしょうか。はじめから「Pythonをマスターしよう」と言われても、その使いどころに迷ったり、習得するまでにかかる膨大な時間と労力に臆してしまうビジネスパーソンも多いはず。
GLOBIS学び放題のコンテンツは、デジタル・IT関連以外のキャリアを積んできた学習者を対象に設計されています。基礎的な単語から、その使用場面へ順を追って学習できるよう設計されており、ビジネスとの紐付けを常に意識した内容になっているため、ビジネスパーソンがデジタル・ITを学び始めるのに適しています。ご利用者からも「非テック部門の人に学んでほしい内容が網羅されている」という感想をいただいています。
GLOBIS学び放題では、おすすめの資格として上述したITパスポート試験や情報セキュリティマネジメント試験のほか、ディープラーニングの基礎が学べるG検定や、ITプロジェクトの推進に必要な知識を得られるPMBOK®️などの関連コンテンツが充実しています。資格取得を目指すことで、学習のモチベーション管理にも役立ちます。
DXにおいてデジタル・ITの活用はあくまで手段であり、重要な目的はビジネス上の新たな価値創出です。デジタル・ITにただ詳しくなるだけでは不十分で、ビジネスを学び、デジタル・ITの知識をかけあわせて初めてDXが推進されます。DX推進を担う人材の育成を目指すのであれば、デジタル×ビジネスを両輪で学ばせることが不可欠なのです。GLOBIS学び放題では、グロービスが30年をかけて培ってきた経営学のコンテンツはもちろん、経済産業省が定義する「デジタルスキル標準」に準拠したコンテンツも用意しており、デジタルとビジネスを両輪で学ぶことが可能です。
いかがでしたでしょうか。
デジタル・IT知識が実務上どのような効果をもたらすのか、またビジネスパーソンが何を・どのように学ぶと効果的か検討する際に、参考にしてみてください。