
【習慣と時間術】
リスキリングで自分の
市場価値を高める方法
DXやコロナ禍などによって、ビジネスモデルや働き方など数多くの変化が企業に生じてきている。 あらゆる変化に備える必要が問われている。そこで、働きながら自分をアップデートする「リスキリング(Re-skilling)」の有用性がクローズアップされている。
そのリスキリングを個人がスマホ一つで手軽に学べるサービスが「GLOBIS 学び放題(グロービス学び放題)」だ。
「いまリスキリングが注目されている背景と有用性」をグロービス講師の鳥潟幸志氏に聞くとともに、職場では得られないビジネス知識を増やし、自己認識力を高められる学びの場としてグロービス学び放題を活用し、 ステップアップを叶えたユーザー2人のリアルなエピソードを紹介する。
今、リスキリングが
注目されている背景と
有用性
鳥潟 これまでの日本社会では良くも悪くも会社組織で通用する閉じられたスキルが求められてきました。
所属する会社で通用する知識・経験、組織を動かす特定の知恵が重要視されており、育成の主体は会社が提供する。 新入社員研修から始まり、階層別の研修、それ以外は上司が部下に仕事を通じて伝えるOJTがメインです。

決められたプロセス、成功ノウハウ、経験を積んでいけば着実にキャリアをアップできる世の中でした。
ただ、ビジネス環境がスピード感を持って変化する現代にはそぐいません。なぜなら、会社の事業そのものが変化するなかで、求められるスキルも変わるから。 キーワードは「フィックスからフレキシブル」です。
職業そのものが数年単位で入れ替わっていくなか、外部環境の変化に合わせて、必要なスキルを柔軟に変えて学び続けていくことが必要。
「自社・自分の業界を超えて何が起きているか? 取り込める知恵は何か? 自分はどのようなスキル・経験を身につける必要があるか?」を考え続けることが求められます。

そして、さらに人生100年時代に絡むキーワードがあります。一つは「働く期間が伸びる」こと。医療技術の進展で私たちの平均寿命は大きく飛躍しています。
60歳で定年して、年金暮らしを迎えるのは土台無理な話。長く、健全に働いていくためにも、今の自分のスキルを変化させ続けることは必然です。
次は「職業寿命の短縮化」。これまでは3世代で1つの職業が消滅する時代でしたが、今後は1世代で3つの職業が入れ替わる時代になると言われています。
今の自分の職業・専門性が、10年後に通用するのか? 自信を持ってYesと言える人は少ないのではないでしょうか。
そして、VUCA時代「一寸先は闇」というのも覚えておきたいところ。これまで100年に1度と言われていた大変革・自然災害が、数年おきに発生している時代です。
発生後には、価値観が変わり、生活様式が変わり、産業すら変わっていきます。コロナ禍でオンラインへのシフトが進んだのは記憶に新しいところです。

「ビジネスの原理原則」は、
なぜビジネス
パーソンの
「ポータブルスキル」なのか
市場の規模が小さければどんなに良いサービスでも発展せず、顧客に喜ばれて売上が上がっても適切なコスト構造の把握や調整がなければ、利益は積み重なりません
戦略やマーケティングに関わる「ビジネスの原理原則」は、どの業種業態のビジネスでも必要とされます。
加えて、論理思考やコミュニケーション能力、自身のキャリア構築と向き合う力なども、ビジネスの原理原則に内包される力です。

以前までの大きな組織で役割がきれいに分かれていた時代には、特定の人が理解していれば良かったでしょう。
しかし、現代のように変化が激しく、現場のスタッフにも自律的な仕事や判断が求められる環境においては、一人ひとりがビジネスの原理原則を知っておくことが重要です。
例えば、「売ることが単に得意な営業パーソン」と「市場環境の変化を捉え顧客の財務分析もできる、営業パーソン」では後者のニーズが確実にあるでしょう。
仮に、なんとなく就職して「やりたいことが特にない」という方にも学びは有効です。
そもそも、学びには「中長期的な目的を設定し、逆算して学び・経験を積んでいく」と「短期的に目の前の課題を解決するために、学び・実践を積んでいき、その繰り返しの中で成長を続けていく」の2方向があります。

世の中が不確実だからこそ、明確に定められない人が多いのも事実です。
学びを実践して周囲への貢献の幅が広がるなかで、情報や経験の質も向上し、自身がワクワクする仕事に何年かした後に出会うという考えも良いのではないでしょうか。
そのためには、小さな学びでもいいので続けて、常に自らを高めることが必要です。
起業経験者:出口さんの場合
「アウトプットのためにも
学び続ける」
出口 私は元々看護師で、現在はのぞみ医療株式会社の取締役として訪問看護の事業を行っています。以前、看護の現場にいた時には漠然とした将来への不安とキャリアに悩んでいました。

特に夜勤をしている時に「このまま将来どうなるんだろう……」と感じていて。そこで、ビジネスに関する知識を身につけたく、「グロービス学び放題」を2018年から始めました。
当時は、神奈川県の湘南エリアに住みつつ、勤務地が東京都内だったので、電車通勤の往復4時間を勉強の時間に充てていました。
当初は「スケジュールを立てて勉強しよう!」と思っても企画倒れになっていましたが、グロービス学び放題の動画「Learn how to Learn」のコース内容を元に、 ユーザーさんたちが集まって学ぶ目標を考えるイベントに参加し、スケジューリングもうまくできるようになりました。
「グロービス学び放題」はリズムよくコンテンツを切ってくれているので、テンポよく自身の足りない知識を網羅的に学べたと思っています。
現在も学びを継続していますが、今は「グロービス学び放題」を辞書代わりにしています。気になるキーワードがあれば、見直したり対談コンテンツに触れたり。
医療業界は他の業界と比べてビジネスの波が遅いので、キャッチアップして戦略を練り直したりしています。
動画で学んだことが活きる日常のシーンは、私が行う医療コンサル現場。例えば、組織開発のカリキュラムを作るときに、新人向けか責任者向けかでパターン分けしたり、入れるキーワードを精査したりしています。
また、SWOT分析やクロス分析をしながら、「売上を分解しながら、どう達成しよう?」と事業に関してもチームで話ができるようになりました。

もちろん、チームメンバーには当初分析や営業の話をしても「面白くない」と言われてしまっていました。 ですから、「どのタイミングで言おうか」や「根回しして話せる環境」は意識して作るようにしています。
やはり、訪問看護の事業なので月末の方が「今月何件訪問したか?」「現在の平均単価や来月の利益はどうなるか?」など数字の話はしやすく、目標に対するギャップも見えやすいですね。
運営体制の課題をどう変えるか等も含めて、月末にこれからの戦略について話していたりします。
「グロービス学び放題」で学ぶ以前は何から学んでいいかわからなかったので、良書と悪書の見分けもできず、とにかく毎月10冊以上本を買い、全部読めず積ん読になっていました。
書籍は自身を律しないと読めないのですが、グロービス学び放題は動画で最低限学ぶべきポイントが完結していたり、何回も倍速で繰り返し見て咀嚼したり、 興味深かったポイントを更に調べて深掘りできたりしたのは良かったですね。
「グロービス学び放題」を通じて、様々な方とお会いして、「マネージャーになったら何をしなければいけないのか?」といった役割も理解ができました。
学ぶことで自分自身のキャリアにも自信がついて、迷いがなくなったと思います。

鳥潟 出口さんの学び方は「守破離」に相当すると思います。
まず、「何から学べばいいかわからない」という際に、学びのフレームワークを「守」としてインプットして、 次に「どう解釈して日常で使うか」を考えて「破」として応用し、最終的には出口さん自身のビジネスの日常に「離」として定着しているのが印象的でした。
現場の課題を意識して学ぶのは、全てのビジネスパーソンに必要なことです。
VUCA時代ですから、キャリアや今後の行く末に不安を抱えながら働くのはある種当然のことです。でも、そのなかで学ぶことで自信がつき、 行動してどんどん周りに貢献されているのが楽しさにつながっていると思いました。
スキルアップ中:古河さんの場合
「育休中に動画を見て
学びを得る」
古河 私はシステム設計のエンジニアとしてこれまで約10年間働いてきました。ただ、結婚して子どもが生まれ、自分が現場の第一線で働くのが難しくなり……。
そのなかで「ビジネス全体を見てみたい」という思いから、第二子出産後、育休中に「グロービス学び放題」を始めました。

1時間のコースでも動画は5分くらいに分割されているので、家事や育児の隙間時間に見ていました。育休中に中級編を楽しく制覇できたのを覚えています。
終えてみると、自分がこれまで何も知らず、いかに狭い世界を見ていたかを思い知らされました。会社の方針説明会を聞いて同僚とあれこれ言っていましたが、経営戦略を分かっていませんでしたし。
クリティカル・シンキングも参考になりました。「論理的に考える」というのは出来ていたつもりでしたが、これまでの自分はできていませんでした。現在では、仕事に取り掛かる前に「今のイシューは?」を書くところから始めています。
これまで機械的に行っていた仕事も、「今ここで答えるべき問いは何か?」からスタートすると、論点が整理されて自分も納得して進められるし、報告する際にもストーリー性があるから納得されやすいです。

「グロービス学び放題」を受けた後、学びが仕事につながったと思えたのは、コスト削減プロジェクトです。 今までのコスト削減検討では、関係者を集めて「何か案はないですか?」とブレストのようなものから始めていたのですが……
今回のプロジェクトでは、最初にイシューから始め、「何のためにコスト削減するのか?」「ターゲットとの乖離はどれくらいか?」 「要素ごとに分解すると、特に攻めるべきはどこなのか?」とストーリーをもって議論を進めることで、関係者の協力が得られやすかったと感じています。
また、他に学びが仕事につながった例としては、「論理的に説得する」「感情に訴える」「ファシリテーションで気づかせる」「交渉する」といったことを学んだことで、 自分が得意なパターンで毎回勝負するのではなく、うまくいかないことがあったら別の手を打てるようになりました。

それから、「グロービス学び放題」を学ぶなかで勉強会を主催することも増えました。 これまで、中高生の頃に友達に勉強を教えていた経験からも「教える時に一番学ぶ」という感覚があります。
ですから、気になるトピックがあったら、「1週間後に勉強会をやります!」と宣言して、内容をまとめて……というのはよくやっています。
勉強会に来てもらうからには、参加された方にも何かしらを持って帰ってもらいたい。ですから、一方的に話すのではなく、意見を求めるなどしていくことで、 ファシリテーションやプレゼンの練習になっています。
学ぶのはすごく楽しいこと。自分の世界が広がっていくので、ワクワクします。自身に合うやり方で学んでいくとよいと思います。

鳥潟 今のお話から、古河さんは自分の中にあるモヤモヤをすごく大切にされているのだと思いました。多くの方は、違和感があっても日常に戻り漫然と過ごして数年経ってしまうもの
まずは、登録して勉強してみよう、次に勉強会を開いてみよう……という日々の小さな行動の積み重ねが現在に至っているのだと思います。
もう一つ印象的だったのは、古河さんの「知らなかったことを知った」という言葉。 ソクラテスの「無知の知」と重なりますが、素直に受け止めて学んで行動に移して埋めていくのはとても良い行いだと思いました。

人には「不安だから学ぶ」という動機はもちろんあると思います。ですが、「学ぶのが楽しい」のは重要なこと。自分が「楽しい」「愉快」「幸せ」と思える環境に導かれるものです。
そんな感情を大事にして、興味がある領域に踏み込むとすがすがしく楽しいもの。学びは最高のエンターテインメントだと改めて思います。
写真:尾藤能暢 デザイン:山城絵里砂+Seisakujo inc. 編集:奈良岡崇子