グロービス学び放題

大人の「学び直し」新時代。

まずは短期の課題解決に
フォーカスせよ

人生100年時代。忙しい日々の中で、学びのインプットを効率的に行う重要性がますます高まっている。 働きながらスキマ時間を使い、新たな知識やスキルを効率よく、戦略的に学ぶにはどうすればいいのか。そして「続ける」コツは何か。

その問いに対し、ビジネススクールで有名なグロービスが出した一つの答えが定額型動画学習サービス 「グロービス学び放題」だ。 累計会員数が21万を超え、4500本以上の動画を有している。法人企業における評判も上々で、全社員にアカウントを付与する企業も出てきている。

「グロービス学び放題」を立ち上げ事業リーダーを務める鳥潟幸志氏に、変革期に生き残るため必要となる学びについて伺った。

   
鳥潟幸志
新卒でサイバーエージェントに入社後、23歳でPR会社ビルコムを共同創業。取締役COOとして、新規事業開発、海外支社マネジメント、営業、人事、オペレーションなど経営全般に10年間携わる。グロービスに参画後に、EdTechとしての新規事業「グロービス学び放題」を立ち上げ、現在プロダクトリーダーとして事業をリード。 グロービス経営大学院や企業研修で思考系・ベンチャー系プログラムの講師を務める。グロービス経営大学院経営学修士課程(英語MBA Program)修了。

パラダイムの変革期に生き残る
には

私がグロービスでいつも意識しているのが、「VUCA(ブーカ)」という話題の言葉です。

これは変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字を取った言葉ですが、 要するに社会環境やビジネス環境を含め、「一寸先は闇」ということです。

VUCA

では、そういう環境の中で組織はどう変わっていかなくてはならないか、という問いに達します。

組織にとって必要なことは、細かいオペレーションを作ることではなく、ビジョンを掲げて、個々人が自分で意思決定できる「フラットな組織」と「自分らしさの追求」です。

自分らしさの発揮という点においては、人は家にいるときと会社にいるときは一緒でいい。そちらの方がより考え方が開放されてよりパフォーマンスが上がるのでは、ということもあります。

よく言われているティール組織とかホラクラシーとか、まさに組織のパラダイムが進化の途中にあるというふうに考えています。

では、これからの組織における仕事の進め方では何が重要となるのか。 昔はPDCAでした。もちろん今も大事ではありますが、PlanしてDoする、この間が長いほど環境変化があり、Planがもう意味をなさないのです。

鳥潟幸志

米空軍のパイロット、ジョン・ボイドさんが提唱した「OODA(ウーダ)」というモデルがいいと思っています。

Observation(観察)、Orientation(状況判断)、Decision(意思決定)、Action(行動)── まさに前線にいる人が観察して、状況判断し、意思決定して、すぐ行動する。

OODA

不確実な環境のもとでは、すでにPlanという考え方が意味をなさない時代になってきているのではないか、と。

意思決定に関しては、ティール組織でも言われるように、「自分で決める」ということがポイントです。 意思決定に影響を受ける人と専門知識のある人に自分の意見を投げ、その人から意見を仰ぎ、最後は自分が決める。

意思決定のプロセスを上の人が持つのではなくて、その階層にいる人が自分で決める「衆議独裁」の考え方により、その後のコミットメントも高まるというわけです。

変革期に生き残るため、実行すべきポイントを5項目にまとめてみました。

変革期に生き残るため実行すべき5つのポイント

起業時代の失敗と学びの必要性
について

私は23歳のとき、友人と3人でPR会社を起業しました。事業コンセプトと営業力があればうまくいくと思っていたのですが、自分の仕事を人に任せるフェーズになってから、うまくいかなくなってきたのです。

売り上げが伸びているのに利益率が下がっていったり、黒字倒産の危機にも遭いました。多くのお客様を競合に持っていかれたこともあります。

私はとても悔しくて、問題が起こるたびに本を買ったり、セミナーに行ったりして勉強していました。すると、目の前にある問題は解決できるのです。しかし、そのたびにまた別の問題が起きるのです。その繰り返しで疲れ、精神的にも追い詰められました。

 
 鳥潟幸志

その後、私は教員になろうと思って、まずグロービスで英語のMBAを取得しました。そしてそこで気づいたのです。自分の頭の中には、ジグソーパズルの穴がたくさん空いていたという感覚です。

目の前に見えていることは勉強するけれども、見えていないものはわからない。このパズルの穴を埋めていったときに、大事なことは3点あると思いました。

まず、経営の全体像を捉えるということ、それぞれの取り組みのつながりを捉えるということ、そして時間軸でした。

その後の2016年、私は「グロービス学び放題」 の事業を任されることになりました。もともと1人で、初めはエンジニアもいませんでしたが、現在は100人を超える組織になりました

やはり3つの視点を持てたおかげで、地雷を踏むことはなくなりました。これが、学びの必要性について私が実感していることです。

壁にぶつかったときに学ぶべき3つのポイント

何から始めればいいかわから
ないとき

学びには、目的が大事です。目的は、短期と中期、長期に分けて整理するのがいい。

短期というのは仕事の課題です。今の目の前の仕事の課題を解決するために学ぶ。

中期はキャリアです。自分が将来的に営業から企画に行きたいのだったら、そのために何をすべきかと考える。

長期は、自分の人生設計です。自分がどういう人生を歩んでいきたいかを考え、そこから逆算してやるべきことを考えていく。 3つの目標を書いてみて、そこに対して自分の今のスキルや状態を棚卸ししてみる。

すると、足りないスキルが見えてきます。そうしたら、仕事で学べるスキルなのか、仕事の外で学ばないといけないスキルなのかを分類するのです。

鳥潟幸志

仕事は仕事でスキルが高まっていくので、仕事で学べないスキルを学習していくというのが、学びの一つのポイントとなります。

学びの一歩目としていちばんお勧めなのが、「短期の課題解決にフォーカスすること」です

さらに言えば、論理思考、プレゼンテーション、ファシリテーションやネゴシエーションといった日々の仕事でほぼ確実に使う内容を学んで、すぐ使う。そのまままねをしてみると、確実に成果が出てきます。

その次は「抽象化」です。例えば、仕事の場でプレゼンテーションを行なった後に振り返りをしたとしましょう。その際に、「あの時の部長は微妙な顔だった、なぜなら、おそらく相手の気持ちを考えずに言ったから」という学びに気づいたとします。

であれば、上記の学びを抽象化して「基本的には相手の状態を把握してからプレゼンしよう」、というふうに学びを教訓化することで、次回以降も行動しやすくなります。

「コルブの経験学習モデル」というモデルがあります。経験したら内省して、概念化、教訓化して、またもう一回実験する、この繰り返しです。

まずやってみようというのが「具体的経験」です。その後に振り返り「内省的観察」をしてみる。次の場面でまた使うために「教訓化」して、また新しい状況下で「能動的実験」をしてみるのです。

コルブの経験学習モデル

学び続けるために意識すべきこと

一日のうち、仕事以外の時間はどのくらいあるでしょうか。自分の時間は全部可視化した方がいいでしょう。それと、モチベーションを保つには習慣化することです。

1日10分でもいいと思うので、ここでこれをやると決めることです。電車の中で「駅間の移動時間は絶対にこれをやる」と決めてみる。それも3日とか10日を乗り越えると、苦にならなくなってきます。

仮に平日だけの10分を1年間続けると、40時間くらい。この時間があれば、一つの科目領域を十分に深掘りすることが可能になるでしょう。1日10分抜き出すだけでそのくらいのボリュームが得られるということです。

もう一つは、「ラーニングコミュニティ」を自分の近くに持つこと。やはり、モチベーションがよほど維持されていないと、一人で学ぶのは限界があります。

同じようなテンションで学んでいる仲間とか、同じような問題意識を持っている会社のメンバーでもいい。そういう人たちと学んだことをシェアしたり、単純に議論したりできる関係性の仲間がいるだけで学びは続くのです。

「グロービス学び放題」でもラーニングコミュニティはどんどん生まれています。参加されている方は、非常に高いモチベーションを維持されています。

鳥潟幸志

「グロービス学び放題」が効果的な理由を、累計約21万人のうち、20~30代のユーザーの方に直接聞いてみました。

まず、明らかにスキマ時間をうまく活用できる、というのが「グロービス学び放題」の特徴です。4,500本以上の動画があり、私が作ったときのコンセプトは1本当たり2分~3分というものです。

30年ほどの歴史の中でずっとビジネス教育をやってきているので、グロービスにはいろんな本があります。これをほぼすべて動画に最適化した形でコンテンツを作り直し、しかも飽きない仕掛けを考え、利用者がアクションしやすいように整理している。

グロービスは基本的に不易流行の原理原則を追求しています。一方で「テクノベート」(テクノロジーをフックにしたイノベーションという造語)が、これからのビジネスでは重要と考えています。

グロービスのMBAそのものも、テクノベート領域をカリキュラムとして追加して、「AI/ビッグデータのビジネスモデルと法的リスク講座」という科目を作ったり、プログラミングのアルゴリズムをビジネス視点で学ぶような科目を作ったりしています。

こういうものはいち早く「グロービス学び放題」に入れていきます。

ラーニングコミュニティも特徴の一つです。自分一人でコツコツやっていくよりは、グループで勉強しようという人の方が増えてきています。

サービスの中でユーザーさん同士がつながって、あるテーマに対して議論などでつながるような機能を、今年中には実装するつもりです。

「グロービス学び放題」が効果的な理由

最後になりますが、私は「学びは最高のエンターテインメント」だと思っています。

何か自己と懸け離れたものを見て楽しいと思うより、自分が学んで行動し、自分が変わって周りの世界が変わった方が楽しい。それが社会課題の価値につながっていることがわかると、なお楽しいでしょう。

鳥潟幸志
制作:NewsPicks Brand Design
執筆:柴山幸夫 編集:奈良岡崇子 撮影:大畑陽子 デザイン:九喜洋介